■ 具体例として
子供がいない夫婦で「自宅は全て妻に相続させる」という遺言を残したという場面を考えてみます。従来の裁判所の判断では、たとえ法定相続人である夫の兄弟姉妹が法定相続分(4分の1)について登記を具備して、これを第三者に売却したとしても、妻が訴えれば自宅不動産の全てを自分の物とすることができました。しかし、本改正によって、この最高裁判所の判断は否定され、妻は登記を備えていなければ、売却された持分(4分の1)を取得した第三者に、自分の権利を主張することができないことになりました。結果として、妻と第三者との共有状態となり、遺言の趣旨が全うできないことになってしまいます。
■ 制度の背景
この規定の趣旨は、高齢社会における大量相続に備え、相続登記の促進を図り、所有者不明土地や空家問題を防ぐことにあると考えられています。このような事態を回避するためには、他の相続人よりも先に登記をすることが必要になります。改正法では、遺言があっても、登記を早急に備えることが重要となります。遺言書の作成や遺言執行を行う際には、この内容をしっかりと理解することが大切です。 |