たとえば、継続的な商品取引契約に、これと併せて根抵当権の設定についても規定した場合はどうでしょうか。この場合には、両者を併せて『継続的商品取引契約並びに根抵当権設定契約書』とでも書いておけばよいでしょうか。 |
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この場合には、このように『継続的商品取引契約並びに根抵当権設定契約書』と書くのがはっきりしていますし、これが正式です。しかし、法律の専門家が作成する契約書は、ちょっとちがいます。法律技術を持った専門家なら、『継続的商品取引等契約書』というように『等』をいれて、含みをもたせた表示をするはずです。 |
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もしも、この契約書のなかに根抵当権設定契約とあわせて代物弁済の予約についての1ヵ条が記載されていたらどうでしょうか。ズルイ相手方であったら、「私は根抵当権を設定することまでは承諾したが、それを代物弁済で取られてもよいとまでは契約していない。先方はうまい標題をつけて困惑させ、標題以外の条項をそっとしのび込ませて、騙して契約をさせたのだから、その部分は取消す。」という言いがかりをつけてくることもあり得ます。 |
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それから、一方にだけ重い義務を負わせるような契約書のときには、相手方が逃げ腰になったり、心理的な抵抗感を起こしたりと、なかなかハンコをとれないことがあります。このようなときには、契約書の標題をずっとやわらかにしてしまうのも有効な方法です。 |
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たとえば、取引先の会社の社長に、個人保証をさせるときには、『保証承諾証書』とか『保証責任契約書』などと堅く表示された書面を提示するよりも、さりげなく『念書』などと表示された書面を提示するほうが、はるかにハンコをもらいやすいでしょう。このように相手方の心理的な抵抗感や緊張感を解きほぐし、スムーズに契約書に調印させるために、最も効果的な標題を選択していくことも大切なテクニックです。 |
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契約書の形式は自由に定めることができるので、契約書の標題を、単に『契約書』としたり、『証書』としたり、『念書』『覚書』『誓約書』などとすることも自由です。ただ、一般的に双方が互いに義務を負っている双務契約では、書面の標題を『○○契約書』とすることが多く、一方だけが義務を負う片務契約では、『念書』とか『誓約書』とすることがひろく用いられているようです。そして、その上で、相手方から余計ななんくせをつけられず、またスムーズに調印してもらえるような標題を選択していくことが、契約書作成上の重要なポイントといえます。 |