「売りましょう。」「買いましょう。」という合意があれば、それだけで売買契約は成立します。「その物を貸しましょう。」「借りましょう。」という相互の意思が合致さえすれば、賃貸借契約も有効に成立します。原則として契約書などなくても、契約は有効に成立するのです。 |
|
私たちが担当した事案で、以前にこのようなケースがありました。地主のAさんが、Bさんへ土地を貸すことになったのですが、正式に借地契約書を取り交わすと、あとから借地権やらなんやらと権利を主張されてしまう。これでは大変だと考えて、Aさんは、何の文書も交わさずに、Bさんに土地を貸し、地代だけを受け取っているというのです。こうやってなんの契約もしないでおけば、後から権利を主張されることもなく、地代も受け取れるのだから、まったくもって安全だというのです。 |
|
Aさんの言っていることは、本当に正しいのでしょうか。これは、とんでもない間違いです。最初に述べたとおり、借地契約書など取り交わさなくても、借地契約は立派に成立しているのです。Bさんが、証拠として、地代の領収証を1枚でも出しさえすれば、Bさんは、自分の借地権を認定させることができるのです。 |
|
では、なぜ契約書を作成するのでしょうか。いま述べたとおり、契約は双方が合意さえすれば、それだけで有効に成立しますので、あえて契約書など作成する必要はないのです。しかし、契約をした相手方が、その契約を無視したり、契約どおり実行してくれなかったらどうでしょうか。その場合には、何か証拠を示して、この相手方に対して責任を追及していかなければなりません。 |
|
こんなときに、最も確実で、そのものズバリの決定的な証拠となるのが契約書なのです。契約書という文書として記載された証拠は客観的に証明力がとても高く、あとになってから、この存在や内容を争ったり、その効力を否定することなどほとんど不可能といえるのです。このように契約書は、契約の成立とその内容を立証する最も有力な証拠として、『切り札』として作成されるのです。 |
|
そのため、契約書を作成する際には、この『切り札』としての役目を十分に発揮できる内容のものにしなければなりません。契約書の作成には、@契約の成立時期・有効期間、A契約の当事者、B契約の趣旨・目的、C契約の対象・目的物、それからD当事者の権利・義務の内容などを明確に規定することが、何より大事になってきます。 |